「校正のお話」を公開してから5年と半年ほど、業界を取り巻く環境の変化とともに「校正」サービスも変化してきました。今回は2023年最新版「校正のお話」です。
平台色校正はなくなるのか?
特に出版社さんでは、一度は印刷会社からこのような話題がでているのではないでしょうか?
平台色校正はカバーや表紙などの校正をとる最もオーソドックスな方法のため、「色校正=平台色校正」と表現される場合も多いです(詳細はこちら)。本番と同じインキ・版・用紙を使用するため、本番の仕上がりイメージがしやすい方法です。
ただ機械の需要としては印刷物の発注量の低下や発注方法の変化(ネットプリントなどでそもそも校正をとらない)などにより減っており、2022年頃からこれまでのような機械保守体制がメーカーから保証されなくなり、一部部品の生産も終了しました。そのため企業によっては「平台色校正自体を辞める」という話になっています。
そこで代替え案として出てきているのが「本機校正(本番の機械で刷ってしまう!)」または「デジタル校正」です。
デジタル色校正 JetPress
次のセクションで説明するようにすぐに平台色校正が無くなる訳ではありませんが、当社でもデジタル色校正の提案を行うことがあります。平台色校正、場合によっては本機校正にも勝るメリットがあるためです。
JetPressの仕組み
DDCPと同じ仕組みでプロファイルを利用したシミュレーション出力です*。JetPressの大きな特徴は、インクジェット出力で様々な用紙に印刷できるところです。ざっくり言ってしまうと「平台校正とDDCP の中間の色校正方法」といったイメージです。JetPressの出力では、インクを吹きつける際にアミ点に見立てた疑似アミ点を形成することで、オフセット印刷に近い仕上がりを再現しています。また、用紙にプレコンディショナーと呼ばれるインクの滲みを抑える透明の液体を塗布し、その上からインクを吐出することで、様々な用紙 への対応が可能となりました。
仕組みのご紹介はこれくらいにして…!メリットをご紹介します。
*プロファイルを使用したシミュレーション出力:基準の機械を決めJetPressでその色基準に近く印刷できるようデータ化すること
JetPressの内部構造:オフセット印刷と同じような流れになっている ※プレコンディショナーの装置はJetPress 特有の仕組み
右:オフセット印刷のアミ点 左:JetPress の疑似アミ点
早く、しかも安い
平台色校正と比べると、「版がいらない」「予備紙がいらない」など様々なコスト圧縮ができ安くご提供できます。また版出力工程がないため平台校正よりも早く出校できます。
濃度ブレがほぼない
色補正を行い複数回校正をとると想定すると 、平台色校正や本機校正では補正されていない絵柄を初校・再校で同じ色味に再現するのは難しいです。その点JetPressは濃度のブレがほぼないため校正確認がしやすく、印刷会社側でも色修正がしやすいです。
しかしデメリットもあります。
デメリット
・特色に対応できない
・モアレの確認ができない
・凹凸のある紙は上手くインクがのらない(事例としては「きらびき」がNGでした)
・水はけのよい用紙(ユポなど)は対応できない
こういった部分の校正はまだ平台色校正や本機校正に頼る必要があります。
フクインが色校正で提案できること
おかげさまでまだ平台色校正については協力いただいているメーカーがあり、現状はサービスがご提供できている状況です。特に特色についてはお仕事としても色々とご相談していただけている状況でもあり、何とか校正しやすい環境をご提供し続けていければと考えています。
JetPressでは色補正を行い複数回校正をとる絵本や料理本など様々な案件での実績があり、校正のしやすさには定評があります。本番での色合わせでも確かな実績を感じています。
またプロセス4色だけでなく、特殊インキを使用した高色域印刷のプロファイル作成にもチャレンジしました。本番と同等の色域までには届きませんでしたが校正するには十分な仕上がりと評価いただき、校正費用の削減につながりました。
フクインのホームページであえて校正項目をたてているように「校正は文字や色などの仕上がりをイメージするための重要な工程です。」と考えています。
今後もお客様に役立つ校正方法をご提供できるように、日々研究していきたいと思います!