書名:『すくすくいのち』 作家:はまのゆか様
クライアント:株式会社 めくるむ様
絵本『すくすくいのち』について
赤ちゃんが生まれるまでの約280日を追った「いのち」の絵本です。お腹の中に赤ちゃんのたまごが宿り、少しずつ大きくなって、ママもパパも赤ちゃんの誕生が待ち遠しくて…。そして、赤ちゃんが生まれる瞬間のページ、是非ご覧いただきたいです。じんわりと目頭が熱くなります。語彙力が少なくてお恥ずかしいのですが「生まれるってすごいことなんだなあ」と読むたびに思います。子どもも大人も、結婚前も結婚後も、おじいちゃんもおばあちゃんも、いろんな方たちに読んでいただきたい、そんな一冊です。
(担当させていただいた営業担当者より、今回の案件に携わらせていただいた感謝も込めての感想です…!)
仕上りを左右する事前の打合せ
絵本の印刷で必ず課題になるのが「原画の色の再現」です。
今回のケースでも、原画を拝見した段階で通常のオフセットインキ※1では再現できない色が見受けられました。そこで重要となるのが事前の打合せです。
多くの絵本の場合、ページを通して鍵となる色や絵柄があります。その印刷再現度によっては絵本の印象を大きく変えてしまうため、鍵となる部分はどこなのか、どんな風に再現したいのか、また許容できる部分はあるのか、などを打合せしていきます。
今回は編集ご担当者の方と作家の方、弊社の画像補正※2担当者と生産管理の責任者も交えヒアリングさせていただきました。
結果として肌に使われている「黄色」、服や小物などでアクセントとなっている「朱色」や「群青色」を原画に近く再現できるように、データだけでなくインキでも工夫することになりました。
実際の印刷仕上がり。特に「朱色」「群青色」は通常のインキで印刷するよりも濁りが少なく綺麗な色味を再現できた。画面上ではお伝えしきれないので現物を是非
インキによって補正方法も変える
テスト校正の結果、インキはマゼンタのみを他のインキに置き替えて印刷することになりました。実はインキの変更は、画像のデータ補正にも影響していきます。
今回のケースでいくと、使用したマゼンタのインキは通常のインキよりも濃度感が出ない色材だったため、マゼンタが使われている部分のボリューム感が損なわれないように意識的に補正しました。
印刷機のマゼンタのツボ。通常のマゼンタインキよりも濁りが少ない
印刷現場へ立会にお越しいただいた様子。編集ご担当者と作家の方から注意点をご指示をいただき進行
最後に
絵本は他の書籍印刷に比べページ数は少ないですが、事前の打合せやテスト校正、本番での印刷立会など、少ないページの中にも作家さんや出版社の方の思いや手間暇がたくさん詰まっているものだと思っています。印刷会社のアイデンティティのひとつでもある「色」のご相談はプレッシャーもありますが、仕上がりに満足いただけると大変嬉しくもあり、色について改めて勉強させていただくありがたい機会でもあります。
こういった経験を活かし、微力ながら今後も本づくりをお手伝いさせていただきたいです。
さらに最後に
めくるむ様では随時絵本の原画を展示されているそうです。絵本の印刷はどれだけ原画を再現できているのか、比較できる面白い機会です。詳細ははめくるむ様HPにて→リンク
左:『すくすくいのち』の原画が展示されていたムッチーズカフェ
右:店内の様子とめくるむ様から絵本を出版されているスギヤマカナヨ様、はまのゆか様
※1 オフセット印刷ではシアンC、マゼンタM、イエローY、スミKのCMYK4色のインキを重ねてカラーの絵柄を再現しており、表現できる色の範囲がある程度決まっている
※2 原画をスキャニングした後は原画の色味やディテールに近づけるためにPhotoshopなどの編集ソフトでデータを補正する必要がある。フクインではDTPソフトが無かった製版の時代からの経験もあり、画像補正には定評があります